日記にて沖田さんがストーカーに会う話(3Zパラレル)連載中です・・・

 

 

 

 

 

 告白1 誰が彼を見ていたか

 

 

 

「高杉ィ、帰ろうぜー。」

 

隣のクラスにひょっこり顔を出す彼に、教室がザワつく。

キャラの濃い生徒が多くいるこの学園でも、中でも人目を引く存在である、

この少年。

 

沖田総悟。

 

1年のころから剣道部エース。その腕前は部長の近藤、副部長の土方をしのぐともいわれるくせに、普段はひょうひょうとしていて、まるで『本気』というものを見せない。

そのくせ必要以上に整った顔をしているものだから、そこにいるだけで目立ってしまう、そういう存在だ。

 

 

 

その彼が、よりによって高杉みたいな奴とつるむなんて、意外だな、

 

 

と銀時はどこか人事のように考えていた。

 

そもそもこの時間は普段の彼なら放課後練習のため部室に直行している時間ではないか。

 

 

 

「お前早いんだよ。ちょっと待ってろ。」

 

 

まるで沖田が迎えに来るのを知っていたような口ぶりの高杉に、周りの生徒も意外そうな表情を隠せずにいるようだ。

 

そもそも高杉はクラスでもかなり浮いた存在で、学校だってやっと出席日数が足りる程度にしか来ていない。

 

学校にくると、屋上で時間をつぶしていることが多いのだが、最近では学校の外では夜兎校のやつらとつるんでいるという噂もある、れっきとした不良だ。

 

そんな彼が沖田みたいに人目のひくやつに普通に声をかけられ、普通に返しているのが、なんとも不自然でならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

机の中の教科書などもそのままに、ほぼ空のままのかばんを机のわきからはずすと、高杉は他の生徒の視線など気にもとめずに、教室の後ろのドアで待つ沖田のもとへと向かった。

 

 

 

 

 

「早くしろい、うるせーヤローが来ちまうだろ。」

 

「うるせー、お前また黙って抜けるつもりなのかよ。」

 

「だってしょーがねいだろ。」

 

 

そう言って小走りでかけていく彼は、ふとこちらを振り返って

 

 

「せんせー、サヨーナラー」

 

 

なんともなく手を振った。

 

 

「おー、若さにかまけて中2みたいなことすんじゃねーぞー。」

 

「俺はれっきとした高2病でい、誰がそんなだせー真似するかよ。」

 

「お前なー、高2が中2の次に馬鹿な生き物だって忘れんなよー。」

 

「へーい。」

 

 

 

 

そこまで話すと、もうしばらく前を歩き始めている高杉の背を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あー・・・だりー・・・もうすぐ期末テストじゃん。テスト作らなきゃなんねーかー・・・)

 

 

 

 

 

職員室にむかいながらなんとなく窓から外を見れば、気持ちのいい空の下、

沖田が高杉のバイクのうしろに乗り込もうとしているところだった。

イスの下のケースに入れていたのだろう、高杉が赤いヘルメットを差し出すと慣れた手つきでそれをかぶった。

 

 

 

 

 

いきなりそんなに飛ばすなよ。

 

と一人ごとがでるくらい大きな音を出して発進したバイクがみるみる小さくみるのを、なんとなく眺めていると、バタバタとさわがしい足音が近づいてくる。

 

 

 

「おいっ!銀八!お前総悟の担任だったよな!?」

 

 

 

あせった様子でかけてくる剣道部副将の彼は、沖田とも幼馴染だったはずだ。

 

 

「おー、どうした大串君。」

 

「誰が大串だ!俺は土方だ、てめーこのやろー!・・・ってそれより!!・・・お前総悟どこにいったかしらねーか!?」

 

「しらね―もなにも・・・さっき目つきの悪い片目のやつと仲良く出て行ったぜ。」

 

 

「・・・っくそ・・・!あいつまた・・・!!」

 

 

「おいおい、そういえばその格好、お前部活中なんだろ・・・なんで・・・」

 

 

「あいつ、最近部活に顔ださねーんだ。」

 

 

こちらの質問を聞き終わる前に、イライラとしたように彼はそう答えた。

 

 

「もうすぐ大会も近いっていうのに・・・あのバカなに考えてんだ・・!」

 

 

こぶしを握ってそう言う土方を

 

 

 

(なに考えてるって・・・お前のこと考えてんじゃねーの?)

 

 

 

という気持ちで見つめていた。

 

 

ふと思い出す。

 

 

教室の一番後ろの窓際のせきで、じっと校庭を見下ろしていた沖田を。

 

火曜日の四時間目、晴れであるかぎり彼は必ず同じ表情で校庭を見下ろしている。

 

 

火曜日の四時間目、晴れである日は土方のクラスは体育だ。

 

沖田は必ず、なんとも形容詞しにくい表情で、いつもこの男を見つめていたのだ。

 

 

 

 

 

なに見てるって・・・お前だけじゃねーの?

 

 

 

紺の剣道着をきたままイライラと歩きだす彼を、

 

(なんであんなにあからさまなのに、きづかねーの。)

 

と人事のように見ていた。

 

 

 

いや、あからさまでもないのかもしれない。

 

 

 

 

自分が、あの沖田という少年に目を奪われているから・・・

 

彼が誰を見つめているかいやでも気がついてしまっただけなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  告白2 誰かがずっと見ていた

 

 

 

『てめー、こんなとこで何やってんだ?』




心底あきれたように、うざったそうに、あんたは言った。













告白2   誰かがずっと見ていた





始まりは小さな出来事だった。



俺と姉は数年前に両親に先立たれ、突然二人暮らしになった。

俺は中学にあがったばかりで正直愕然としたが、はじめて自分の前で、声を殺して泣く5歳年上の姉を見て、誓った。

 

自分は、決して泣かない。



自分は、



この先一生、自分がこのきれいな人を守るのだ。









俺が高校に入ってすぐに姉が体調を崩した。

 

姉は昔から肺が弱く、都会の空気が合わないのだ、と医者は言った。

 

それならすぐに引っ越そう、と言えば

「総ちゃんが、ちゃんと学校をでるまでは、だめよ。お友達もいるでしょう?」

と頑として首を縦に振らなかった。




それならば、ということで彼女には何週間か空気のきれいな場所で休むようにと条件を付けた。

最近ではこちらに戻ってくると、咳がとまらなくなるため、田舎に小さなアパートを借り、週末は俺のほうが会いに行く、という生活だ。



つまり、今自分は高校生のくせに実質、独り暮らしをしている。ということになる。

 

面倒なので土方さんと、近藤さん、

それに妙に勘のするどい担任のほかは誰もそれを知らない・・・・と思っていた。







「・・・・なんだぁ?・・・」

 

部活を終えて、クタクタになってたどりついた我が家。

いつもどおりアパートの階段をあがって202号室のカギを開ける・・・前に、ここ数日ポストすらチェックしていなかったことに気が付き、なんともなくポストをあける。

 

そして・・・これだ。



「手紙・・・全部開けられてるじゃねえか・・・」

 

自分宛の手紙がすべて開けられている。

電気代なんかの明細もあって、少し物騒だ・・・でもかといって何か盗られたわけでもなさそうだ・・・。

 

(明日大家にでも電話するかな・・・俺はともかく、ミツ姉名義のものもあるし・・・)

 

ぼんやりと、そんなことを考えながら、ポケットから携帯を取り出し階段を昇りだす。

携帯についているワンピースのメリー号のストラップの鈴がリンリンと鳴った。

 

ポチポチポチ・・・ピコ

 

『てめー土方、このやろー。俺んちに嫌がらせするとはどういう了見でぃ。』

 

・・・・送信完了。





202のカギを暗闇の中開けて中に入り、いつもどおり電気をつける。

 

朝家を出て行ったのと同じ状態がそこに広がる。

 

自分が洗濯しなければ、洗濯が山のようにたまっているし、

皿洗いしなければ、シンクにやっぱり朝と同じ状態で皿が置いてある。

 

まあ、独り暮らしとはそういうものだ。




しばらくすると携帯がポケットでブーブー、と振動する。

 

チリン、またメリー号ストラップが小さく鳴った。

 

『はあ?ふざけんな。誰がそんな幼稚な真似するか。なんかあったのか。』

 

自分の冗談に、いつもの調子で答えつつ、いつもの調子で心配してくれる彼の文章にあきれたように笑った。



なんと返そうか、一瞬考えて、それからバカバカしい、と携帯を閉じた。

 

彼、土方十四朗は俺たちの・・・家族のようなものだ。

両親が亡くなったとき、遠い親戚にあたる近藤さんの家族がずいぶんよくしてくれた。

 

そしてそのときよくつるんだのが、近藤さんの幼馴染の土方、というわけだ。




今朝の残りの味噌汁を温めようとガスコンロに火をつける。

何度か失敗して、ようやく青い火がついたところで、ピンポンと短くドアベルがなった。

 

「沖田さん、宅急便でーす。」

 

ドアを開けると、中年の男性が小さな箱を持って笑顔で立っている。

 

「こんな時間まで御苦労さんだねー、おやじさん。」

 

そんな軽口をたたきながら、玄関に置いてるシャチハタを取り出すと、

 

「沖田さん、また美人のお姉さんからみたいだよ。よかったね。」

 

と人当たりよさそうな笑顔で返される。

 

受領印を押しながら、箱にはりつけてある紙を見れば、ミツ姉にしては少し角ばった字で「ケーキ」

「沖田ミツバ」と書いてあり、「冷蔵」に丸がつけてある。



姉はこうしてたまに、むこうで作ったものなどを自分に送ってくれていた。

優しい姉を思い、頬をほころばせながら箱を開けると、中にはきれいに包装された手作りのパウンドケーキが入っていた。



姉がこうしてなにかを送ってくるときはかならず

『十四朗さんたちにもわけてあげてね。』と一言手紙を添えているのだが、今回はそんなことはない。

 

姉上が、何かと土方さんの話を聞きたがるのを、俺はずいぶん前から気付いている。

『十四朗さんたちにも』、というよりは『十四朗さんに渡してね。』のほうが正しいのかもしれない。

 

それを考えるとき、俺はなんだか、イライラするようなムカムカするような感じが腹の上のあたりでする。



そして、残念ながらその感情はただの姉に対するやきもちではないことを、自分はずいぶん前に自覚している。

そしてその押さえ方を知らないほど子供でもないのだ。








味噌汁の火を止めて、おわんにそそぎながら

 

(味噌汁にケーキなんて、ミツ姉が見たら笑うな)

 

と一人でにやけてしまった。





姉上は決して料理上手とは言えないが、俺にとっては姉上の料理が「家庭の味」になっている。

俺は2、3個入っていたケーキをぺろりと完食して、ゴチソウサマデシタ、と手を合わせた。




























コツン、




と玄関のドアのほうから物音がしたのは、その次の日の朝方のほうだ。



(・・・なんだ?)



ちょうど起きる時間にもなっていたので、寝癖はボサボサ、パジャマの上着の下から片手で腹をポリポリ書きながら玄関に向かうと、ドアの下の隙間から茶色の封筒が差し込まれていた。



(げ。苦情かよ・・・昨日ドラクエの音量でかすぎたか。)




大きなため息をつきながら封筒をあける。

 

中には数枚の写真が入っていて、そこにはまぎれもなく昨夜の自分が映っている。

 

美味しそうにケーキを頬ばる自分の姿が映った数枚の写真に唖然としながら、一緒に入っていた小さな白い紙切れを広げる。





『美味しかった?僕の精子入りのケーキ。』


















「・・・・っ・・・」



吐き気を抑えられずにトイレに駆け込んだ。